失敗しない SharePoint 活用

私の 2007年以降の活動のほとんどが SharePoint に関連する技術支援でした。技術支援が必要となるくらい活用するためのハードルが高いのが SharePoint だったと感じています。その理由は役割不足です。
一般的な業務システムは開発者が開発したものをユーザーが利用し、管理者が運用管理を行うという形式でした。しかし、SharePoint では、開発を行わず標準機能だけで活用したとしても、ユーザー側にはサイト構築者、コンテンツ投稿者、コンテンツ参照者と言った役割が必要になります。
SharePoint の展開が失敗したプロジェクトの多くの原因として、要件を満たすサイト構築者が不足している (または、存在しない)事です。
例えば、ある部門で業務活用できるポータルを作成すると仮定します。比較的 SharePoint の技術や機能を理解している情報システム部門の担当者は残念ながらユーザー部門の業務を熟知しているわけではないので、ユーザー部門で便利に活用できるサイトを構築するのが困難です。逆に部門のユーザーは IT の専門家ではないので SharePoint の事が分からないため、適したサイトを構築するのが困難です。そのような課題を抱える状況にあるにもかかわらず、コンテンツ参照者からは「こういう風に参照できるようにして欲しい」、コンテンツ投稿者からは、「こういう情報を入力するだけで完了するような自動化が必須」と言った要望だけは膨らんできます。特に別のシステムからの移行の場合は悲劇です。「これまでできていた事は SharePoint でもできるのが当たり前」と言う事で、すべての要望が必須要件として定義されている場合も多くありました。
多くのケースは情報システム部門の担当者がサイト構築者の役割を担い、要件と言う名のユーザー要望を可能な限り実現すべく、SharePoint を学習しながらサイトを構築することが多かった印象です。組織規模が大きければ大きいほど、部門が多いので、サイト構築の負担が情報システム部門に集中する方法は適してないのですが、各部門で SharePoint の専門家を短期雇用してサイト構築者の役割にすると言った海外企業的な雇用ができないため、他の選択肢がなかったのかもしれません。もちろん、サイト構築者の役割を外部業者に委託すると言う方法は日本国内において一般的ですが、残念ながら業務委託を行うためには、契約や仕様書が必要になります。SharePoint の専門家であれば、適切な仕様書を作る時間で SharePoint サイトがほとんど構築できてしまいます。逆に SharePoint の専門家でなければ適した仕様書を作るのはかなり困難だと思います。適切な仕様作成が原因で苦労することになったプロジェクトは数多くありました。
私はコンサルタントとしてプロジェクト全体を見直す作業をお手伝いしたり、トレーナーとしてサイト構築者を育成したり、外部業者としてサイト構築を受託したりと、様々な形で技術支援を行ってきました。
どれをとっても役割不足が原因で苦労したケースは多かったのですが、そればかりではありません。私の経験で成功したケースはやはり部門ユーザーにサイト構築者になっていただく方法が多かったと思います。当然、IT の専門家ではないので、大幅に機能を限定して利用していただく事になります。一例を挙げると、[wiki ページ] と [ドキュメント ライブラリ] の使い方のみを習得していただき、その機能だけでポータルを構築すると言った SharePoint の 1/100 にも満たない機能しか活用しないような方法でも、工夫次第で便利に業務活用していただけたケースが多くありました。ただ、やはり機能を限定しすぎると、実現できない要望も多くあったのは事実です。
しかし、幸いなことに現在の Office 365 には Microsoft Teams があります。また、SharePoint Online には "モダン" と呼ばれる機能が追加されました。このモダン サイトこそが、部門ポータル用に Microsoft がサイト構築を行ったものだと捉えてください。これでこれまで課題であったサイト構築者の役割が不要になります。しかも、私が過去に提唱してきた大幅に機能を限定して利用する方法より、よっぽど高機能な作りこみが完了しています。それでも、足りない部分はありますが、それらの未解決課題は Microsoft Teams が解決してくれる部分も少なくないです(Teams の一部機能は SharePoint を利用するので、Teams 自体が SharePoint 活用例とも言えます)。
残念ながら、SharePoint を活用するケースは過去と比較すると限定されますが、失敗しない SharePoint 活用が容易になったことは間違いないと思います。
